乳児型低フォスファターゼ症3例の遺伝子変異と臨床像

内橋隆行 望月弘 道上敏美 大薗恵一

【目的】低フォスファターゼ症は、組織非特異型アルカリフォスファターゼ(TNSALP)の異常により引き起こされる。本症のうち出生後6ヶ月以内に発症するものを乳児型と呼ぶが、体重増加不良、高Ca血症、呼吸不全などを呈して、約半数が死に至る予後不良の疾患である。今回、本病型の3例について遺伝子変異と臨床像を検討した。

【対象】症例1:乳児期に高Ca血症や呼吸困難をきたしたが、徐々に症状は改善し、現在4歳である。症例2:体重増加不良、哺乳力低下にて3ヶ月時に発見され、8ヶ月時に肺炎にて死亡。症例3:1ヶ月検診にて体重増加不良により発見され、7ヶ月時に呼吸不全にて死亡。症例1、2、3の血清ALP値は、それぞれ193 IU/ml、29 IU/ml、22IU/mlであった(正常値408-826 IU/ml)。【方法】患者及び家族の線維芽細胞または血液よりgenomic DNA、RNAを抽出、特異的プライマーを用いてPCR、RT-PCRを行った後、direct sequence法にて配列を決定した。ALP発現ベクターpcDNA-ALPに同定された変異を組み込み、COS7細胞に導入し、変異型ALPの活性を検討した。

【結果】3症例とも、TNSALP遺伝子変異のcompound heterozygoteであり、症例1:K207E/G409C、症例2:L282P/delT1735、症例3:K207E/delT1735であった。 再構成実験では、delT1735型変異は 活性を完全に失っていたのに対し、K207E及びG409C変異では活性が部分的に残存していた。【考察】死亡した2例に見られたdelT1735変異は日本人の周産期致死型の本症でもしばしば認められ、本変異が本症の重症化に関わりを持つことが示唆される。K207E変異は過去に報告が無いが、本症の重症度にかかわる可能性も考えられる。

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